先日友人宅にお泊まりした時、
友人とその娘ちゃんが揃っておススメしてくれた本。
小説とか最近ほとんど読んでないんですが、
ファンタジーは昔から大好きで。
この本はホラーという位置づけらしいんですが、
私好みのダークホラーファンタジーと言ってよい、
今までに読んだことのない、強烈に惹かれるお話しでした。
これこの方のデビュー作だそうなんですが、
短編二話が入っていて、
「夜市」もよかったんですが、二話目の「風の古道」が
強烈に面白い・・・というか、
私個人の心に強く残るお話しでした。
ふたつのお話は直接繋がっていないんですが、
「永久放浪者」という人たちが出てきて、
あの世とこの世の境目のようなところで、
そのはざまに捕らわれて放浪する、人であるのに人でないような人たちが
このどちらのお話しにも中心にいます。
人間の理屈ではない超自然の法則に支配された
ある夜にだけ開かれる市の中や、
神々の通る古代からの人には見えない道の中で
行き来する鬼や幽霊や妖怪や人間たち、
数奇な運命でそれらに関わり、
好むと好まざると放浪を続けていくことになる人々。
生の中の一瞬に起こり、
その後のすべてを変えてしまうのに、
茫洋として定かでなくなる記憶や恐怖。
この作家さん、小さい時から山とか行ってたんじゃないかと
思うんですが、
町中や家や神社の裏や、山の中にまで
見えない道(霊道)が通っていて、
その中をさまざまな神や妖怪が行き来しているなんて、
絶対にあるような気がしてしまう(笑)
山とかいろんなところで、まったく人のいない
そんな雰囲気の場所に出会うことがよくあります。
しかも馴染みの小金井公園や中央線沿線が出てくるんですが、
その情景と相まって、不思議なリアルさを感じてしまいました。
そしてどちらのお話しにも共通するのは、
大切で身近な人とのたぶん永遠の別れ。
戻すことのできない時間。
それぞれ全員が散開して、それぞれの放浪をしていく。
日常に戻ったとしても、誰もが実は迷路のなかにいるという感覚が、
とてもリアルに感じました。
特に「古道」のなかでの死生観が、
非常に自分にはなじむ感じがあって、
「古道」の中で生まれたり、死んだりするものは
「古道」の所有物となって、外の世界に出ることは出来なくなるんですが、
死ぬと魔に魅入られて、腐乱した体でいずこかへ歩いて行き、
やがて深淵に飲まれるか、
生きているうちに「古道」からたぶん認められ、
種を渡されてそれが死骸の胸から発芽し、
その肉体は「古道」の並木の偉大な大樹になり、
やがてその魂は「古道」を越えて世界を渡る風となるという
そんな死の形と人間の魂が解放される様と、
それまではみんな放浪の旅の途中なんだという感じが、
ものすごくしっくり来ました。
自ら負い目を追った魂が、死や罰を望むことや、
負わされた魂がどうしようもなくそれを受け入れて生きようとする様、
人間にはどうすることも出来ない、
一見理不尽にも見える法則に支配されて生きざるを得ないのだということ。
出来ごとが終わり、それぞれの旅は続き、
その繰り返しで人の生は過ぎていく。
残るのはただ経験を魂で感じることだけなんだなー
書きたいこといっぱいあるんですが、
何かひとつでも書くと、すごいネタバレになってしまって、
この本に関しては、最初から何も知らずに読んだ方が絶対に良いし、
その衝撃や深い感動を少しでも減らしてしまうのは罪な気がして、
でも書きたい気持ちでこんな記事になりました。
(笑)
少しずつ、この作家さんの作品を
読んでみたいと思っています。