ちょっと前ですが、
北アルプスの薬師岳で母子のクマに会いました。
薬師岳はその雄大で巨大な山体で、
飛行機の窓からも一目でわかります。
いつものように折立から、この時は5時間以上かけて太郎平まで、
沖縄の仲良しのお客さまたちとゆっくり登ります。
小屋に着いてのんびりしていると、
だんだんと日が暮れていきます。
キレイな夕陽になりそう!
みんな写真を撮りに出てきました。
キレイだ・・・・・
埋蔵金伝説のある、鍬崎山が浮かび上がっています。
変化して行く空に、目が離せない。
日が落ちると、とたんに寒くなります。
翌朝早くに小屋を飛び出して順調に登って行き、
ゴーロの続く沢を抜けてあと少しで薬師平というときに、
登山道の上にクマが。
しかも親子連れです。
これちょうど登山道の上にいます。
「本州の山を登るようになって
何年か経つけど、まだクマだけは見たことないの。」
と言っていたお客さんたちは大喜び。
まだちょっと距離があるので、様子を見てくることにして
「あまり騒がないように、食べ物を出さないように。」
と言ったつもりだったんですが、
様子見から戻ってきたら皆さん楽しそうにお茶とお菓子タイムしていました。(笑)
こちらに気付いても落ち着いているのと、
一生懸命食べていて、登山道の上からなかなか移動しないので、
クマを避けて藪漕ぎルートで薬師平まで登りました。
だんだん降ってくる人や登ってくる人が現れてきたので、
両方に声をかけながら、山頂に向かいます。
手前はニセ薬師のピーク。
下からはこれが山頂に見えます。
ガスるとこの辺りは非常に迷い込みやすくなります。
真夏でも凍えそうな寒さとホワイトアウトに簡単になってしまいます。
1963年に起きた愛知大学山岳部13名の大量遭難事故は、
雪のない視界の開けた状態では、こんなところで・・・、
と思うようなこの東南尾根で起こりました。
折立登山口の鎮魂碑は、この事故の遭難者のために建てられました。
薬師岳山頂。
晴れたら天国。だいたい風が強いです。
ラーメンを食べたいとのリクエストをもらっていたので、美味しいのを作ります。
薬師如来はインドの自然の精霊ヤクシャが夜叉や鬼子母神となり、
女性形ヤクシーという女神が薬師如来の元になったと言われているようです。
インドから伝わったサンスクリット語で、そのまま日本語になっているのは経典を始め
たくさんありますよね。
ストゥーパ(仏塔)→ 卒塔婆
クンダリーニ → 軍荼利
ブッダ → 仏
ボーディサットバ → 菩薩
サッキャ → 釈迦
などなど。
山頂祠の後ろから、このまま五色ヶ原〜立山・劔と歩いて行けます。
いいルートです。
本当に眺めが素晴らしい。
荒れるともうほんとに風雨が激しくなって、
とたんに危険な山になってしまうんですが。
下ってくると、さっきの親子グマが登山者のすぐそばに見えました。
様子を見ていると、登山道のすぐ下を
ずっと登ってきているようです。
特に登山者を気にしない様子なので、
珍しいこともあるもんだなあと感心して下りました。
クロマメ(ベリー)や、サンカヨウなんかの美味しい実をたくさん食べて
夏を存分に過ごしてほしいなぁ
太郎平小屋でこの親子グマの話をしたところ、
数日前から現れていて、
雄グマから子供を守るために、人間は安全だと学習した母グマが、
登山道の近くで餌を採っているのだと分かりました。
母グマと交尾するために、雄グマが子供を殺してしまうからです。
「ひょっとすると、
それで子グマが1匹だけだったのか・・・」
クマは人間と同じくらい賢い。
母グマの子供を守る智慧でした。
あの子グマに、無事に大人になって欲しい。
太郎平小屋の後ろに、太郎山があります。
この道をずっと行くと、三俣蓮華や黒部五郎に向かうのですが、
長くてエスケープのない、黒部源流部に続く裏銀座ルートです。
大変だけど、素晴らしい展望です。