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山と自然と不思議。日常のあれこれの雑記ブログ。

しっぺいたろう。実在した霊犬

 

川上犬 (参考写真 はにまる王子さん)

川上犬 (参考写真 はにまる王子さん)



しっぺいたろうのお話を知っていますか?

実は子供の頃、親が買ってくれた絵本のなかのお話しのひとつで、あまりに大好きだったので

小学校で紙芝居を自分で作ってやったりしました。

 

 

成人して仕事で国内の出張が度々あって、

ある時長野県の駒ヶ根に初めて行き、

その時案内していただいたのが、光前寺という古色蒼然としたお寺でした。

 

何もかもが古びて非常に美しかったのですが、

山門の石垣からヒカリゴケがのぞいていたり、

鳥が翼を広げたような見事な三重塔

夢窓疎石が造ったという美しい庭

そして何より驚いたのは、しっぺい太郎のお墓があったことで、

位の高い貴族や侍のみが数段の階段を墓に持つような時代に、

石垣の柵にまで覆われた立派な墓に衝撃を受けました。

この犬が普通の犬ではなかった証拠です。

 

そしてそこに書かれていたのは「早太郎」の文字でした。

 

「しっぺい太郎だ・・・!!!

 本当にいたんだ、おとぎ話だと思ってた・・!!!」

 

 

お寺の伝記によると、

700年前(!!!)、この寺で山犬が子どもを産んで、

その中の1匹が非常に強く俊敏に育って、「早太郎」と名付けられた。

ある日一実坊弁存(いちじつぼうべんぞん)という旅の僧が、

「ここに早太郎という人はおりますか?」

と尋ねて来たのだと言います。

「早太郎という人はおらんが、この犬が早太郎です。」

 

当時静岡県磐田市の見附天神社には、田畑が荒らされぬようにと

毎年祭りの日に、白羽の矢がたった家の娘を生贄として神に捧げる

人身御供という忌まわしい風習があり、

村を通りかかった弁存が、神様がそんな事をするはずがないと、

深夜に神社に潜んでいると、大きな物の怪が現れ、

「早太郎には知らせるな、早太郎には知らせるな。」

と騒いで消えました。

 

弁存はすぐさま早太郎という人物を探して、

ようやく光前寺にたどり着いて早太郎を借り受け、

娘の代わりに早太郎とともに箱に隠れ、ついにその物の怪を倒しました。

そしてその正体は大きなヒヒだったというのですが、

日本にはヒヒはいない。

 

まずそこからして小学生の自分にも「ありえへん話」として、

大好きだったんですが、完全なおとぎ話だと思っていたのです。

 

早太郎の墓を前にした私の驚きを想像してみてください。

 

 

しっぺいたろう(早太郎)が存在した。

しかも武士より手厚く葬られている、

普通だったら有り得ないことだ・・・・、

では、物の怪は?

妖怪って本当に存在するの・・・!???

 

 

まあちょっとしたそれまでの常識というか、

軽めの自我の崩壊みたいなものを起こしたわけです。

そしてだんだん興奮して来ました。

 

普通だったら、まあそんな事もあるよね・・って、

あまり深く考えないようにして終わると思うんですが、

その寺には、お話には入っていなかった早太郎の最後が伝わっていたのです。

 

 

ボロボロに傷ついて深手を負っていた早太郎は、

寺の山門まで自力でなんとか戻って来て、

一声鳴いて力尽きた。

 

 

そしてこの寺には、史実として

弁存が早太郎の供養のために写経した大般若経が奉納されているというのです。

遠く離れたふたつの場所に同じ伝説が残り、静岡側には見附天神社のとなりに、

早太郎を祀った霊犬神社まであるのです。

 

 

 

700年前、鎌倉時代後半?

大きなヤマイヌ?

お話に出てくるヒヒは日本にはいない動物だった、

(大きなサルのこと??)

静岡側(しっぺい太郎)長野側(早太郎)と、呼び名が違うのは何故なのか?

名前が違うのに、なぜ見つけることが出来たのか?

(風のように速い、の意味から疾風→しっぺいになったのかもしれませんね・・)

 

ナゾは深まるばかりです・・・・・。

 

あまりに遠い時代のお話で、

何か考察できるような手がかりは何ひとつ無いのですが、

光前寺というお寺の美しさと、

しっぺいたろうが実在していたということの衝撃が、

私にとっては特別な不思議の世界への入り口のひとつであったのは、

間違いありません。

(つまりは人に害を為すレベルの妖怪も存在していた・・・!?)

 

また時間をかけてゆっくりと訪れ、

現地に行くのは得るものが非常に多いので、

静岡の方にもぜひ行ってみたいと思っています。

 

個人的に早太郎は、川上犬みたいな犬ではないかと思っているのですが、

当時のヤマイヌオオカミ、その大きさや性格など、

ナゾに包まれた部分が多すぎるのですが、

いつかこれだ!!!と思う早太郎の絵を描いてみたいものだと

思っています。

 

 

 

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ちなみに光前寺の開祖は慈覚大師円仁の弟子、本聖上人

本尊は不動明王だそうです。

円仁は恐山平泉中尊寺浅草寺の開祖としても知られ、

行く先々で弘法大師空海とともに出会うことの多い方です。

 

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