おきらくごくらく。

山と自然と不思議。日常のあれこれの雑記ブログ。

アバランチ。身近にある恐怖

冬の北横岳

 

日本国内で連日のバックカントリー中の雪崩事故。

 

長野県の小谷村で発生した事故で亡くなったお2人のうちのひとりは、

米国のプロスキーヤー、カイル・スメイン氏であったとの報道がありました。

まだ31歳のフリースタイルの元王者で、昨年末結婚したばかりだったとの事・・・。

 

 

www.bbc.com

 

 

数年前今回の白馬乗鞍岳と同じ裏天狗で、スノーボーダーが埋没3時間後に

生存救出されたという奇跡の事案がありました。

しかもビーコンの反応がなく、プロービングだけでの救出だったのもすごいですが、

普通18分過ぎたら危ないと言われているのに、

周囲にトレーニング中のガイドと雪崩捜索救助講習中の外国人、

総勢20名がいた事など、本当にたくさんの奇跡が重なったと思います。

 

 

youtu.be

 

 

 

自然の中での事故は、準備不足や体力・知識・技術不足が招くことのほかに、

気象遭難や雪崩事故のように天災と人災の間にあるものが存在すると思います。

 

天災の場合は当然その時にその場所に居合わせなければいいのですが、

竜巻・地震・津波も同じで、

なかなか事前に完璧に予知するなんてことは不可能です。

特に雪崩は斜面を見ただけでは分からない事が多く、

何が誘発になるかわからない、

ウサギが斜面を横切っただけで起こる場合もあるのです。

 

 

特に新雪の中を滑るバックカントリーはやってみると本当に楽しく、

経験を積むごとに行きたい気持ちが募りますが、

何回かの小さな「・・・・死ぬかと思った・・・」という体験の積み重ねが、

生き延びるための瞬間に働く勘みたいなものを、少しづつ育ててくれると思います。

それでも雪崩は避け切れるものではなく、

圧雪バーンやパトロールの見まわりのあるスキー場の中でさえ、

雪崩が起きる可能性があります。

 

ここでのポイントは「小さな体験の積み重ね」です。

小さな体験でも、周りに人がいないとか、パニックになるとか、

方向がわからない、一時的に失神して上に雪が覆いかぶさってしまうとか、

ちょっとした事で本当に簡単に死んでしまう可能性が高いです。

 

ニセコやカムイみたいなすごいパウダーの新雪で、

頭を下にして転倒し、サラサラ過ぎてはい上がる事さえ出来ずに

蟻地獄のように埋まっていくとか、(呼吸場所の確保も出来ない)

雪崩の後のデブリがコンクリートブロックのように固まっていくところを

見てしまうとか、

木の根元の穴に落ちても自力で上がってこれず、

ましてや雪にガッチリ固定されたスキーを外す事さえ出来ないとか、

雪崩訓練で安全な状況の中で雪に埋もれてみるとか。

 

今回亡くなった方は、20cmの雪の下に埋もれていたそうですが、

昔トラッカーのトレーニングでたった10cmの土に埋もれただけで、

体の何一つ動かす事が出来ずに、本当にパニックになる寸前でした。

雪の重さ、特に湿雪の重さは想像以上で、

毎年屋根からの落雪で亡くなってしまうのも、まったく同じです。

 

呼吸の確保ができないだけでも、

私たちは簡単に死んでしまうので、

一度その恐怖が染み付くと、自分の中で警報スイッチが形成されます。

 

 

ABCNewsの衝撃的な映像を発見しました。

私のように閉所恐怖症のある方は、閲覧注意してくださいね。

 

 

見た感じこの女性は、アバランチエアバッグという、雪崩に巻き込まれたときに

作動させるエアバックのおかげで、迅速な救助に繋がったようですね!

よく雪崩に巻かれた時は、上に向かって泳げとか言われるのですが、

どちらが上かわからない状態で、板やブーツ・ザックもつけて

泳げるとはとても思えません。

フロートシステムによって上に向かって引っ張られるのと、

首回りの空間もある程度確保されるのと、

周囲から発見もされやすくなるので、これは非常に有効だと思います。

ただ紐を引く暇もなく巻き込まれたら、どうしようもありませんが。

 

 

outdoorgearzine.com

 

 

雪崩に巻かれるだけでなく、

車から降りて道路脇の雪がふかふかに堆積している斜面に落ちたり、

埋没の危険は積雪期には常にあります。

 

もしそんな場面になってしまったら、

まず口の周りにエアポケットを作ること。

もう手も動かせなくなってしまっていたら、口の周りの雪を食べてエアポケットを作ること。

これだけで生存確率が格段に上がります。

 

もしスキーやトレッキングの場合は、巻かれる前にストックは投げ捨て、

少しでも手の自由を確保すること。

まぁこれは咄嗟には出来ないし、ストックの先端が雪上に出ていて助かったケースもあるので何ともですが。😅

 

 

上記の白馬乗鞍の雪崩事故でもわかるように、

ビーコンなしの捜索は、周りに救助の精鋭がたまたま集まっていたとしても

救出まで3時間

ビーコンを持っていたら位置特定まで5分

これは非常に大きな差です。

冷たい雪の中で3時間生き延びたのは、本当に奇跡だと思います。

 

 

 

 

 

北海道のTV局制作の番組です。

 

youtu.be

 

 

アバランチビーコンには遠く及ばないとしながらも、

ビーコンアプリを開発されている方がいました!

雪の中ではスマホの電池はあっという間に消費してしまうので、

なかなか難しいかとは思いますが、素晴らしい取り組みだと思います。

 

www.yamareco.com

 

 

私も使っているココヘリライフビーコンが出て、

それがアバランチビーコンとして使えるか検証した記事です。

 

yamahack.com

 

山やどこかで亡くなって行方不明のままの場合、

最長で7年間、保険金やあらゆる手続きが出来ないことになります。

ココヘリはもともとその事態を避けるためのものなのですが、

スマートフォンのGPSの位置情報や、

ウオッチなどのデバイスの体調の変化を感知する機能というのは、

本当に世界をかなり変えて来て、

悪く使う怖さもありますが、

人命救助にますます関わっていくのだろうと思います。

 

スキーでの雪崩事故が大きく取り上げられやすいですが、

落雪や大雪で車に閉じ込められるなど、

山で起きることは実は普段の生活の中にも起きる可能性があるのだと、

常に気をつけたいと思います。

 

 

 

 

www.nekosippona.com

 

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