毎週おこなっているアーティストデート。
(アーティストデートとは、インスピレーションや刺激、見たいとかやりたいとか作りたいとかのやりたかった衝動を形にする。なんでもあり)
特に絵にこだわっている訳ではぜんぜんないのですが、
先日は日経日本画大賞展に行ってきました。
この作品、すごくよかったです!
何か液体を流しているパイプラインかな?
角度によって虹色にキラキラします。
なんだか楽しい。
日本画って実は、絵の具を溶く方法ひとつとっても、
ふだんチューブに入った絵の具をパレットにとってすぐに使えるのとはぜんぜん違います。
(今は便利なチューブタイプもありますが)
たらし込みの効果などを狙って立てかけて描く以外は、
絵の具が流れてしまうのでどんなに大きな作品も床置きで、
その上に板を渡してずっと覆いかぶさるように長い期間描いたり、
絵の具も岩絵具や顔彩や胡粉、水干絵の具などを
溶かした膠と合わせて絵の具をまず調合するところから始まります。
宝石とされているラピスラズリなどの鉱物で出来ている岩絵具は、値段もピンからキリですし、
まず乳鉢で粒子を細かく砕いて使うという、
非常な手間と時間がかかるのです。
今は新岩絵具という合成の岩絵具もあって、
上の作品のキラキラ光る部分は、
ひょっとしてそれなのかな?
なんにしろこれだけの大きさの画面を作り上げるには、
たくさんの時間と情熱が込められている、
ということは確かです。
実はこの野地美樹子さんの作品を目の前で見たくて初日に行ったのですが、
いったいどうやって描いたのだろうとしばらく見入ってしまいました。
じって見ているとさまざまな色彩を、
このイチョウの巨樹がまとっているのが目に入ってきます。
実は以前、郷さくら美術館に野地さんの鳴門の渦潮の作品を見に行ったことがあって、
この巨樹のイチョウの作品も、ぜひ自分の目で見てみたかったのです。
そしたらお隣の作品から強いなにかが
山嶺の風景画だと思って近づいたら・・・・
ズン
ズン
なんと山の王の精霊たちが、
山そのものの命だったんですね・・・!
とても素敵な作品でした。
どれもとても大きな作品なんですが、
近づいてみたら・・・
こ、細かい!
そして色がきれい・・・・!!
まるでブリューゲルのバベルの塔のように、
さまざまな人の行動が物語を持ってもっと生き生きと描かれています。
そしてよく見てみると、
なんだかすごく楽しそうなんですよね、
たぶん鬼退治の物語だと思うんですけど、
鬼ヶ島プレジャーランドみたいな。
そしてこれ!
わずか2cmぐらいの大きさで描かれていたんですけど、
写真撮って家でズームしてよくよく見たら、
鬼と一寸法師が戦っている!???
一寸法師らしき影は、1ミリにも満たない大きさです・・・!
細密画のこのポテンシャルで、
これだけの大きな画面を描き切っているとは!!!
驚きです〜〜〜〜(汗)
あ、あれは・・・ひょっとして、
巨大な竹内栖鳳!???
近づいてみたらばなんと・・・、
1円玉のフロッタージュで描かれた巨大な肖像風景画と、
たぶん作家ご本人の小さな肖像。
これはすごい・・・・。
タイトルは、この作品を作るのに使用された1円玉の金額でしょうか。
いやすごい、作品も素敵だけど面白い!!!
この他にもTwitterでお見かけする作家さんの大きな作品がいくつもありました。
日本画という素材を使って、これからどんな表現が出てくるのか非常に楽しみです。
本物を自分の目で見る、
最近の母親の目がほとんど見えなくなったり、
体が思うように動かせなくなったりしているのを見ると、
当たり前に思っていたことは決して当たり前ではなく、
期限付きの幸運なんだなあと思います。
絵を描くのもそうですが、
チャンスがあるときに、やりたいことを形にする。
昔は本当に時間も体力もなんでも持っていたのに、それを有効に活かせなかった、
それでもまだ今日の自分がもっとも若いのだと思いつつ。
人によって時間や人生の捉え方も、
幸せの感じ方も、やりたいことも実現したいこともみんな違う。
そして人生の変転によってもそれはどんどんと変わっていきます。
この世界で生きている状態で過ごす時間は有限。
なるべく後悔しないように生きたいものですね。
帰りはひさしぶりの上野でどこかに寄ろうかと思いましたが、
あまりの観光客の多さに疲れも出て、
少しだけベンチで休憩してから真っ直ぐ帰りました。
ここ上野は、江戸時代から徳川や戊辰戦争での彰義隊の激戦、
戦前戦後と数多くの人たちが生き死にし、通過し、
たった80年前には駅の地下道では戦争で家や家族や大切なものすべてを
失った人々が身を寄せ寝ぐらとし、
ここから浅草周辺は物凄い数の人々の思念が重複しているところで、
そんな事を知らなかった子供のときから、特に浅草は息苦しい雰囲気を感じていたので、
さいきん若い人たちが気に入って住んでいるのを見て、隔世の感があります。
確か国際劇場が浅草ビューホテルになるとき、
電通が広告を打つためにリサーチしたところ、
「浅草には若者がまったくいない・・・!」
という衝撃の結果が発表されたことがあり、
酔っ払いとストリップと年寄の街というのが私の子供の頃の印象でした(笑)
自然はまったくなく、地面はアスファルトで覆われていて、
子供だった私は世界中の地面はこうなっているのだと思い込んでいて、
そうではなくこの下に土があるのだと知ったとき、
驚いて金槌でアスファルトを叩いて割り始めて、父親に怒られたことがありました。
この下にいる幼虫や虫や植物はどうなったの・・・!?
って実は結構なショックでした。
まあそれどころではなく、
地面の下にはたくさんの無縁仏が埋まっていることを、小学生になってから知るのですが。
上野から本郷、根津は芸術や学問の地。
地面の下にはたくさんの歴史が埋もれていて、
その上でたくさんの美しいものを見たり体験したりできる現在が、
とても貴重で大切な時間と思える1日でした。