絵本を手に取るいちばんの切っ掛けは、
私の場合は何と言っても表紙の絵です。
自分がハッと目を惹かれる絵を見たら、必ず手に取って読みます。
そして「自分の本箱に置きたいなあ!」と思った本は、
感動して記事を書いています。
この本も、思わず表紙の絵に惹かれて読んでみたんですが、
内容の切なさと絵の素敵さが相まって、
心をキュッと掴まれたような気がしました。
このお話の最初のページは、
いきなりショッキングなシーンから始まります。
ある朝突然元気だった仲良しの小鳥が死んでしまって、
呆然と座り込むこぐま。
悲しみにくれながら、美しく木の実の汁を使って染めた箱を作り、
花びらを敷き詰めて小鳥をそっと横たえます。
すべてほぼモノクロなのですが、
どのシーンも淡い色彩を感じさせる美しさで、
くまの深い内面世界を想像させます。
昨日の朝、小鳥と話したことを思い出すくま。
その深い喪失を他の誰もが理解できず、
くまは閉じこもってしまいます。
長い時を真っ暗な部屋で昼も夜も座り続け、
時折うつらうつらしながら過ごしていたある日、
久しぶりに外へ出たくまは、
バイオリンの箱を持って草の上で昼寝をするやまねこと出会います。
この出会いのシーンがまた非常に素敵で、
やまねこは本当に猫らしく、
最初は片目を開けてくまに「なにか、よう?」
と話しかけます。
このやまねこが初めて、くまがどんなに大切なものをなくして
深い喪失感の中にいるのかを理解します。
やまねこのバイオリンの曲に合わせて、
小鳥の可愛らしい姿や話したこと、2人でした様々なことを思い出すくま。
このシーンは思わず涙してしまいました。
その後の光差す深い森の中でのシーンや、
素晴らしいラストの展開は、ぜひこの絵本を手に取って見てみてください
文 湯本香樹実
絵 酒井駒子
河出書房新社 初版発行2008年4月30日
あと特筆なのは、この絵本の全ページが
特別な紙で出来ている気がします。
手触りも普通に触る絵本の感じとは違っていて柔く、
全ページこのグレーがかったオリーブグリーンが紙のベースとなっていて、
モノクロの絵のハイライトの部分だけが白く抜かれているのです。
本当に素敵な絵本です。
子供にも、大人にも心に残る一冊だと思います。