おきらくごくらく。

山と自然と不思議。日常のあれこれの雑記ブログ。

世界はこんなに美しい。アンヌとバイクの2万キロ

またまたすごく素敵な絵本を見つけてしまいました!

絵本なんですが、

これ大人の女性がとても惹かれて一目で

「読んでみたい!」

と思うんじゃないかと思います。

 

私はまずこのタイトルに強烈に引っぱられました。

自分もインスタに書いている言葉なので。

 

 

 

エイミー・ノヴェスキー/文 ジェリー・モースタッド/絵 横山和江/訳

 

 

 

アンヌ・フランス・ドートヴィルという、

若き美しい女性がたったひとりで

バイクに乗って世界中を旅したという実話を元に

描かれたこの絵本。

 

 

1973年のある日、

ほんの少しの服と必需品だけ持って、

カワサキのバイクにまたがってパリを出発したアンヌ。

飛行機でカナダまで飛び、北アメリカを横断し、

アンカレッジから日本、そしてインド、パキスタン、アフガニスタン、イラン、トルコ、

ブルガリア、ユーゴスラビア、オーストリア、ドイツ、

そしてパリへと戻った。

 

旅から50年後、今回彼女の旅が絵本になって、

日本で翻訳刊行されることになりました。

アンヌは1944年生まれということですから、

旅に出たのは29歳の時、2023年の現在は79歳。

まるでフランス映画になってもおかしくないようなエレガントな姿でバイクにまたがり、

キャンプをしながら各地を旅して行きます。

 

日本ではバイクが壊れてカワサキの明石工場でエンジンの修理をしている間、

3週間日本のあちこちを旅したそうです。

 

それから1975年にはBMWのバイクでオーストラリア大陸を周遊、

1981年にはホンダのバイクで南米一周の大冒険。

 

72歳でバイクを手放し、現在はパリから少し離れた村で猫と暮らしながら、

執筆活動を続けているそうです。

 

 

彼女の写った写真の数々は、

ファッションデザイナーにも影響を与え、

Chloe の2016年コレクションとして発表されているそうです。

 

絵本には現在のアンヌとそのインタビューや、

たくさんの写真の載った付録が付いています。

 

いやマジかっこいい。

表紙に惹かれて手に取ったんですが、

夢中で読んでしまいました。

 

 

「文章を書きたい。

 いろんな場所へ行ってみたい。

 世界中を旅したい。

 未知の場所へ。」

 

そう思ったアンヌがバイクにまたがって出発する。

これ若い頃に割とみんな感じることですよね。

私は文章を書きたいとは思いませんでしたが、

知らない場所に行ってみたいというのは、

今だに旺盛な好奇心とともにあります。

(別に遠くでなく知っている町の中で

 知らなかった自分の好みの場所を

 発見するだけでも、

 かなりの満足感が日々あるのです。)

 

 

未知への旅立ちまでの少しの不安と決断も、

どの人も感じるあの心のふるえです。

 

 

そして素敵なのが、出発するときの必要なものだけの少ない荷物の中に、

メモ帳・ペン・よく切れるナイフ・歯ブラシの他に、

水着・おしゃれな白いドレス・サンダル・口紅

入っていたことで、

その他は最低限のバイクの工具やオイルやガソリンタンク、

テントがわりの防水シート・寝袋・ロープ・救急セット(目薬・アスピリン・抗生物質ほか)

カップ・鍋・スプーン・フォークというキャンプ道具の中で、

彼女らしさが光るチョイスで、

キャンプをしながらの旅の途中で、

道路沿いの食堂を見つけて、

おしゃれをしてたった1ドルの夕食をとるシーンなど、

とても素敵なのです・・・。

 

 

バイクの横に防水シートでタープを張って火を起こすだけのキャンプ。

雨の時には降り込められて、

ひとり文章を書いたりトランプをしたりの木々に囲まれた夜。

 

そしてユーコン川での夜に、

鏡のようにきらめく水に

ひとりオーロラを見ながら浮かんでいるシーンが

本当に素晴らしい。

 

昔西表島の人のまったくいない岬に船で渡ってキャンプをしていた夜、

満月と満天の星の中で暖かい海に浮かんで、

オオコウモリが夜空を飛翔しているのを眺めていたときの感動を、

ありありと思い出しました。

 

(ユーコン川は冷たく無かったのかな、

 流されなかったのかな・・・? 

 クマは・・・((((;゚Д゚)))))))

 などと、読んでいてちょこっとした心配もよぎりました。笑)

 

インドのデリーでバイクが壊れ、

列車でチャイを飲みながら景色を眺めて文章を書いているシーンも

とても素晴らしい〜〜〜

 

そして彼女がもっとも行きたくて、

人生に強い印象を残したのはアフガニスタンだったようです。

砂漠を走り、何度も転倒しながらカブールに到着し

バーミヤンの遺跡でひとり、

人生で一番美しい瞬間かもしれないと思える時間を過ごし、

アフガニスタンの人々や子供達とさまざまな交流をします。

 

その後もトルコ・ブルガリア・ユーゴスラビア・ハンガリー・オーストリア・

ドイツなど、大陸をバイクで旅して行きました。

 

 

世界は美しくあってほしい。

そして、世界は美しかった。

 

人間はよいものであってほしい。

そして、人間はよき人びとだった。

 

世界は美しい。

世界は思いやりにみちている。

 

 

旅であろうとなかろうと、

人は毎日様々なことがあり、

特にこの現在、アフガニスタンやミャンマーやウクライナやロシアや、

世界の各地で起こっている戦争や抑圧のただ中で、

非常に美しく力強いメッセージを伝えてくれる素晴らしい絵本でした。

 

2022年10月に発行されたようで、巻末には実際のこの旅での写真も載っていて、

非常に訴えかけてくるものがある絵本なので、ぜひ一読をオススメしたいです。