おきらくごくらく。

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沈思黙考。漫画家さんの死について

漫画家の芦原妃名子さんの自殺のニュースに驚いた。

漫画もドラマも知らなかったけど、該当するツィートがタイムラインに流れて来ていて、

目にしていたからだ。

 

何があったのか調べてみたら、

昨年、日本テレビから執筆中の【セクシー田中さん】という漫画のドラマ化のオファーがあった時、

まだ連載中で完結していないため、

原作に忠実に作って欲しいことと、

そのためにいくつかの条件を提示して、

それが不可能ならお断りをするという内容での

ドラマ化の受諾だったらしい。

 

でも実際に上がってくる脚本は違っていて、

その対応や漫画の締め切り、

大切な自分の作品の伝えたいものを、

よくあるステレオタイプの改変で切り捨てて欲しくないと、

やった事のない脚本作業もやらざるを得なくなって、

最後の2話分をおろされた脚本家が、昨年12月に主演女優さんと一緒に写ったInstagramで不満を漏らしたのが拡散されたのを見て、

懸命にTwitterとブログで何があって、

どうしてそうなったのか説明したのち、

突然すべてを削除して

「ごめんなさい、

 攻撃するつもりではなかったんです」

と書き残してダムから投身した。

 

不憫でならない。

昼も夜もない過酷な漫画家の創作作業の上、

慣れないドラマの監修や脚本やそれに伴う数々の対応で疲弊しきって、

生きていくためのすべてが折れた。

 

どうやら彼女は脚本家はじめ役者やスタッフや制作の誰とも実際には会ったことがなく、

やりとりの窓口は小学館だったらしい。

 

自分が毎日悩み、描き直し、

命を削るようにしてようやく世に送り出した作品が日の目を見て、

ドラマ化の話が来て、

改変しないで原作そのままに作って欲しいと

希望していたのに上手く行かず、

時間と労力と精神力を激しく削られて消耗して行き、

会った事もない人たちが、自分の作品のタイトルのハッシュタグとともに

メインの関係者としてネットに載って、自分への不満と共に拡散されている。

 

どんな気持ちだったろうか。

 

Twitterを見てみたら、

驚いたことにアカウント開設は今月。

つまりそれまでTwitterはやっておらず、

事実を伝えたいとただそれだけのためにアカウントを作り、

そして心が折れてごめんなさいとだけ残して翌日亡くなった。

その間たったの数日。

 

可哀想でならない。

怖かっただろう、飛んだ瞬間に後悔したかも知れない、

最後に気付いて止めてくれる誰にも会えなかった。

何ひとつ悪いことなどしていなかったのに。

謝ることなど何もなかったのに。

 

 

漫画家さんにとってドラマ化は、

自分の作品の増刷がかかる大きなチャンスで、

それに対するスタンスがそれぞれ皆違うのだと言う。

 

スラムダンクの井上雄彦氏のように、超人気作で一切実写化させない作者さんや、

進撃の巨人の諫山創氏のように「何でもやっていいですよ」と手渡すケースと。

 

どちらも膨大な労力と不慣れな作業、

結果出来上がるものを考えると、そうなるだろうと思う。

 

漫画の実写化は実際かなり難しい。

アニメだったら原作にプラスされた魅力が上乗せされた作品を

枚挙にいとまがないほど見させてもらっているけれど。

 

原作を知らず、ドラマで最近見て好印象なのが

【きのう何食べた?】とか【作りたい女食べたい女】なのだが、

私の場合はアニメと違ってドラマの場合は、

「良かった、原作も読んでみよう」

となった事がたぶん無い。

TVドラマの場合、初見でイメージが決まるその物語の登場人物は有名タレントであり、

脚本家や制作スタッフの作り出した世界観だからだ。

そこで完結してしまう。

だからきっと見たことあるドラマで、漫画が原作なのを気づいていないものがかなりあるんだろう。

そこがアニメと実写の違いと思う。

(映画はまた違うのかもしれないが、漫画原作の実写版はほぼ見ないので)

 

アニメのようにとことん細部に渡って原作によりそい、

あまつさえ改良さえしてしまうのは実写では至難の業。

原作が小説であるならば、初の映像化に脚本や監督の手腕が必要で光るのだろう。

だが漫画はすでに映像なのだ。

 

制作側でどうしても自分流に映像化してみたい、

という熱意で作られている日本のドラマ作品も、

私は見ない方なので今思い出せないけれど、きっとあるのかも知れない。

 

けれどドラマや実写はまったくの別物と割り切ってしまうことなど、

本当はどの漫画家さんにとっても難しいことだろう。

その作品を生み出した原作者であるのだから。

 

 

次々と新しい番組を作らねばならないTV局は、

ヒットしている原作のアイデアとイメージだけが

欲しいのだろうなと、残念だが思わざるを得ない。

 

 

芦原さんが、今はつらい場所から抜け出してくれている事だけを、強く祈っています。

 

芦原妃名子さんへ捧げる薔薇