おきらくごくらく。

山と自然と不思議。日常のあれこれの雑記ブログ。

富士山の空47選。変化する気象と天候 Mt.Fuji

 

2019年最初の山の記事は富士山にしようと思ってたんですが!?(笑)

すでに2月の厳冬期になりましたね!!

 

 

富士山て、ホントに不思議な山ですよね。

外国人はもちろん、

見慣れているはずの関東の人々でさえ、

飛行機や新幹線から見える姿に

うっとり見入ってしまいます。

 

 

富士山といえば、その変化する天候の読みが

非常に難しい。

数年前から外国人登山者が非常に増えているんですが、

弾丸登山(夜中にスタートしてご来光を山頂で見て、そのまま降りて来る)

の一因は、3776mの独立峰をかなり甘くみている

ということがあると思います。

(かく言う私も、一人でよくやっていましたが笑)

山での悪天候を体験したことがあるのとないのでは、

引き返しの決断や、自分の体力や装備の限界の判断に

大きな違いが出てきます。

 

 

4000mぐらいの高さというのは、

アメリカやネパールやその他大きな大陸の徐々に標高が上がっている場所では、

なんということのないトレッキングで上がれてしまうこともあり、

日本のように海(海抜0m)から極度に立ち上がる地形で、

しかも富士山という独立峰の荒れた時の凄まじさは、

なかなか想像しづらいものかも知れません。

 

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私はこの古新聞を骨董屋さんで買い物をした時の

包装紙として偶然手に入れたんですが、

何の記事なのか気付いた時に、非常な衝撃を受けました。

 

1966年3月5日

英国海外航空のボーイング707が、

富士山上空の乱気流に巻き込まれて右翼が折れて空中分解し、

御殿場の登山道入り口・太郎坊付近に墜落し、

乗客乗員124名が全員死亡するという大事故でした。

原因は富士山周辺に起きる特殊な乱気流

【山岳波の剥離現象】だったと

報告されています。

 

今では乱気流が発生しそうなときは

大きく迂回ルートが取られていますが、

このときは会社のボーナス旅行のアメリカ人団体客が多く乗っていたため、

富士山を間近で見せようと、上空まで近づいたのではとも言われているようです。

 

私も数年前にこの古新聞を見るまでは、

全く知らない大事故でした。

ほとんどの日本人が今や知らない

過去の事件になっているのだと思います。

 

 

 

富士山は南に駿河湾や相模湾が迫り、

北と南の水分を含んだ風が複雑に巻き上がって

激しい気象の変化が起こる山です。

標高差100mごとに、気温差マイナス0.6度

風速1mごとに、体感温度マイナス1度と言われていますが、

山頂はだいたい麓の気温からマイナス16〜18度、

それに風速10mの風が吹けば、ざっと28度近く下がる計算になります。

山頂の年間平均気温はマイナス6.4度、

(シベリアの北極圏付近や、稚内とほぼ同じ)

今まで記録された最大瞬間風速は91m

しかも酸素濃度も低いので、ますます低体温になりやすい。

冬の暖かい帽子や手袋が、夏でも必要な場所なのです。

 

 

 

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これは私が初めて冬の富士山に登ったときの写真なのですが、

(何十年前かは聞いてはならない笑)

アンザイレンし、ピッケルを雪面に突き刺し

耐風姿勢で体を低くした全員の上を、

暴風が吹き抜けていった瞬間です。

溶岩礫を巻き込んだ風速数十メートルの吹き飛ばされそうな竜巻が、

何回も断続的に襲ってきます。

痛くて顔を上げることすら出来ません。

風が通り過ぎるのを見計らって

少しずつ前進するしかないのですが、

自然の力の凄まじさとその中での自分自身の力というものを、

初めて体験した時だったように思います。

 

 

富士山に雪煙が立っているのをよく見る事がありますが、

あれはこの時よりもっと凄まじいジェット気流のような風が

吹き抜けている状態ですね。

 

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この日、御殿場側のルートがどうなっていたか、

想像するだけでブルッとします・・・

 

 

1972年には、

やはり御殿場ルートで低気圧の襲来によって発生した悪天候により、

55人の登山者のおよそ半数の24人が死亡しました。

好天で条件が良ければ、下山はたったの2時間の場所。

 

「小屋を一歩出たら猛吹雪で、

ほんの1m後ろの小屋がわからず

 戻れなくなって遭難してしまった。」

 

当時雪上訓練で宝永火口から200m下や五合目にテントを張っていたグループが、

夕方からのミゾレで、当時のテントやシュラフがびしょ濡れになり、

翌日午前7時半に下山を開始して20分ほどで、

悪天候の中次々に行動不能に陥っていったそうです。

この時濃霧ではぐれたり、雪崩に2度襲われたりして

11人のグループのうちたった1人が警察にたどり着いたという

極限状況でした。

 

 

ja.wikipedia.org

 

 

 

 

私自身も天候悪化で単独で御殿場ルートを下っている時、

やはりホワイトアウトしたことがあって、

下っているはずなのに、自分が登っているのか下っているのか

左右のどちらに歩いているのかさえ、

全く分からなくなったことがあります。

ひどい時には、自分の手がようやく見えるか見えないかという

吹雪に巻かれたこともありました。

人間はほとんど視覚に頼っているので、

このような状況になると気圧のせいもあり感覚が麻痺して、

簡単にパニックを起こします。

もしこのような状態になった時は、絶対にむやみに動いてはいけません。

しかし衣服が濡れていたら、

死に物狂いで下山せざるを得ません。

 

 

幸いなことに、今の登山ウエアや装備は、

ちゃんとしたものを身につけて中が濡れてさえいなければ、

悪天候でも充分にヌクヌクと暖かい。

フードをかぶり、フェイスマスクで目以外を覆って、

吹雪が吹き荒れていてもその場に落ち着いてしばらく座る事も出来ます。

10分か15分ぐらいその場でじっとして、

一瞬吹雪が切れたその時に見えた景色を確認し、

確認できた所まで移動して、またじっと待ちます。

その繰り返しでその時も下山してきました。

 

(その時初めて、御殿場ルートに間隔をあけて

 高さ数メートルもある棒が立ててある理由がわかりました。

 吹雪の一瞬の隙に、確認できるのがその杭だけなのです。

 立ててくださった皆様に感謝です。)

 

 

サバイバルの世界では、

人が最も短時間で死に近づくのは体温の低下です。

ウエアは最も重要なシェルターなのです。

 

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晴れていればこんなに穏やかな天上の楽園。

(といってもマイナスの寒〜い世界ですが。笑)

 

 

 自然界は、特に山や海は

「晴れれば天国、荒れたら地獄」。

 

自然に畏敬(おそれ)の念を持てないことは、

命取りだ、と思います。

 

 

その後単独で様々な場所を登るようになりましたが、

あらゆる危険に対してカンが働くか、

どこで引き返すか、ホワイトアウトをどう切り抜けるか

また進路をどう変更するかが 試されていくことになりました。

(あとヒトに対する注意もですね)

 

 天候の予報も、山では違ってくることが非常に多く、

近年では温暖化や気象の変化により、

この時期のこの山は・・・という

今までの経験が役に立たない状況も良くあります。

 

そして何回も同じ山に登ると

実は飽きてしまうこともあるんですが、

よくよく考えたら、富士山は毎回まるで初回の時と

あまり変わらないインパクトを与えてくれる山でした。

 

なぜだろう・・・?

と考えたのですが、

その大きさと厳しさ、そして激しく変化する気象と

それらが見せてくれる光景の数々が

毎回違うからなのかも知れないな・・・と。

 

あるいは自分の富士山への絆の思いが

強いのかも知れません。

 

 

富士山はお山開き寸前の6月の末でも、

猛吹雪になることがあります。ビビるぐらい真冬です。

またスキーで山頂から滑ったり、

冬季に火口に入ったりしたこともありますが、

どれも非常に危険があることなので、

十分な訓練と、何が危険かを知っておくことが必要です。

それでも落石や避けられないことがいくつもあります。

 

 

そのうち最も恐ろしいことの一つが、

山でのカミナリです。

 

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こんな雷雨になりそうな時は、

もっとも緊張します。

濡れて風に吹かれたら低体温になりやすいのと、

どこにも逃げ場がない上、特に富士山では

下から雷が来ることがあるからです。

雲より高いところにいますからね。

 

 

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途中で雨に捕まりながらも、無事に小屋に到着。 

 

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 この日は雲が切れる事もなく、

横浜や神奈川方面に、巨大な雷雲が立ち上がって

まるで「天空の城ラピュタ」のシーンのように、

ピカピカと音もなく稲妻を輝かせていました。

現地は凄まじい大雨とカミナリだったようです・・・・。

 

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翌朝の御殿場口山頂です。

点々とヘッドランプをつけて人が上がってきます。

夜が明けてきました。

 

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もうすぐです。

空の色がきれい

 

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たくさんの人が、ご来光の見えるポイントに集まって来ています。

 

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出ました!!!

 

まるで人が小さな木の枝か何かのようです・・・。

 

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www.nekosippona.com

 

 

 

 

昨年、御殿場ルートでお客さんに

 

播隆上人(ばんりゅうしょうにん

 という方が笠ヶ岳に登ったとき、

 槍ヶ岳の方向にブロッケンが現れて、

 その丸い虹の中心に自分の影が映っているのを見て、

 観音様が現れて天啓を受けたと感じ、

 その後何年もかけて日本中を行脚して寄進を集め、

 何ヶ月もかけて当時誰も登ったことのない

 槍ヶ岳の山頂に立ったんですよ。』

 

と話していたら、

なんと目の前にそのブロッケンが現れて、

本当にびっくりしたことがありました。

 

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初日に登って行く時は5合から上は快晴で、

宝永火口から雲が沸き立つような迫力ある光景でした。

 

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向こうに見えるは宝永山。だんだんと下から雲が上がってきて、

ちょうど話が終わったところに突然・・・・



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出た〜〜〜!!!! 

 

 

なかなか見ることの出来ない現象なので、

昔の人は本当に驚いたし、感動しただろうと

思います。(今でもそうですけど)

お客さんも大喜びしていました。

しかも図ったかのようなこのタイミング・・・!

ウソみたい(笑)

 

ブロッケン現象は、虹の輪の中心に、

必ず自分の影が入ります。

そこに何人並んでいようが、見る人は必ず

自分の姿を光輪のなかに見ています。(たぶん)

 

そういえば、初めて沖縄に行ったときも

南西航空機(懐かしい)の窓から見た海の上に

ブロッケンが出ていて、

完全な円の虹の中心に、自分の乗ってる飛行機の

シルエットがはっきり映っていて、

それがずっとついてくるように見えるので、

「何だあれ〜〜!?」と不思議に思いながらも

すごく興奮してワクワクしてました。笑

 これもとてもラッキーでしたね。

 

 

厳冬期の八ヶ岳のバリエーションルートで稜線に上がった時、

片側にブロッケン、片側にダイヤモンドダストという

ダブルラッキーな気象に遭遇した事もありました。

信じられないような空気の冷たさと、

美しい現象に、ただただ言葉もなく眺めていたのを覚えています。

(当時はカメラを持っていなかったので写真はない・・・残念) 

 

 

 


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ヘッドランプと満月が同じ大きさに見えますw


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山頂剣ヶ峰から見たご来光と吊るし雲。


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富士山の影が映った影富士。

 

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山頂のお鉢巡り。

北アルプスも見えていますね。

 


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ここが吉田ルートの山頂。

久須志神社ですね。

たくさんの人が続々と登ってきます。


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御殿場口下りの六合目(2790m)付近です。

画面左端ぐらいから大砂走りが始まります。

最初は下に岩などあって硬いので、

いきなり勢いよく走ると捻挫しますので気をつけて。

ここからが意外と長いです。笑

 

マスク・スパッツ・サングラスはあったほうが良いですね。

 


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墜落事故のあった太郎坊より少し上部です。

 

 

 

 

またある時は、夜中に七合目を出発するまでは晴天だったのに、

時間と共にガスに覆われて完全に視界がない中、

山頂少し下のご来光が見えるたった一ヶ所の場所で、

まさにその瞬間

黄金色の日の出が見れたり

 
 

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晴天です。

宝永火口の中の登山道に、針の先より小さい登山者が見えます。

 

この宝永火口は今から312年前の宝永4年(徳川綱吉の治世)に、

今問題になっている南海トラフの大地震起き、

その49日後に大噴火を起こして山体が吹き飛びました。

遠く江戸まで大量の火山灰を降らせ、

噴火は2週間も続いたそうです。

 

 

この時横須賀城のあった静岡県掛川市は、

地盤が隆起し、2キロあまりも海岸線が遠のきました。

大津波と大地震と噴火と大規模の地盤隆起。

8年前の東日本大震災を経験した身でも、

その大変動は想像もつかないレベルです。

 

3つのトラフが同時に動き、

震源域の長さはなんと500km!!

当時の人たちは、この世の終わりかと思ったに違いありません・・・。

 


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宝永火口から吹き出した巨大な噴石。

ここでも大規模な落石が度々起きています。

 

 
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振り返ると宝永山と駿河湾が見えます。

スプーンですくったような所の右下が火口です。

この日は最高の晴天でした。


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宝永山の向こうに箱根山から伊豆半島が見えます。

もう少し上からだと、箱根山の凹みの中に芦ノ湖も見えます。

 


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山頂は雲が早い動きで湧き上がっています。

風が強いのでしょうね。

 

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キレイですねえ〜〜〜

駿河湾と三保の松原まで見えます・・・。


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三日月のような山中湖。

よお〜〜く目をこらすと、スワンボートまで見えます。笑


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出発の午前1時には晴天で、富士市の夜景や

満月に駿河湾が美しく輝いていました。


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登山開始後

あっという間に強風とガスで、視界がきかない状態になって行きました。

暗闇の中、登山道もわからないぐらいの濃霧です。

あんなに晴れてたのに。

 

真っ暗な山頂で、強風が吹き荒れる悪天候になったので、

日の出を待たずに下山することに。

 

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するとだんだん明けてきた空に

 

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ご来光が。

ちょうど途中でご来光が拝めるたった一箇所に差し掛かっていました。

みなさんわあっと声をあげて、しばらくここで激しく流れていく雲の中の

金色の太陽に、じっと見入っていました。

 

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富士山は気象の変化が激しく、

装備の不備は命に関わります。

全く報道されていませんが、昨年も夏の山頂で凍死者が出ています。

天気が良いからと弾丸登山で半袖短パンで体力に任せて登ってきて、

疲れ切って寝込んでそのまま凍死してしまう。

下が真夏で30度以上あろうとも、

富士山頂はマイナスの真冬の寒さだと思ってください。

冬用の帽子や暖かい手袋が必要です。

綿の衣類は乾かず冷えるので、アウトドアでは「死の衣類」と

呼ばれます。ジーンズとかは論外です。

 

ヘッドランプ無しで転倒すると、

溶岩の砂礫の山なので、かなりの擦過傷か服が破れます。

山頂でご来光見ようとして暗いうちに上がってきても、

途中の小屋には入れませんし、寒くても休む事も出来ません。

山頂も休憩所は5〜6時にならないと開きません。

よく銀色のレスキューシートを巻きつけたり被って

横になっているのを見ますが、

あれはカッパや防寒着の中に着てください

そうでないと全く役に立ちませんので。

 

 

この数年間、真夜中に小屋の外で震える

外国人や日本人にたくさん会いましたが、

世界遺産として富士登山を観光化していくなら、

国を挙げての啓蒙が必要だと思います。

1年を通して、外国人登山者の事故も非常に多いです。

転倒してしてザックを背負ったまま回転すると、止まらなくなります。

いつのものか分かりませんが、

一般登山道から外れた場所で、割れたヘルメットを見つけた事もあります。

 

 

 

この金色のご来光の後の、

この日のハイライトはコレでした。

(風の音など入っていますので、音声オフをお勧めします〜)

 

2018年夏の富士山で、目の前に龍みたいな雲が突然現れたときの動画です。富士山では毎回さまざまな現象と出会います。いつも幸運だなぁと思っています(*´ω`*) #mtfuji #japan #dragoncloud

 

 

 

数えきれないぐらいの様々な体験と、

素晴らしい絶景をいつもありがとう、富士山。

やっぱりここは、特別な山でした。