なんでもファースト・インパクトって尾を引くというか、
その後々までけっこう影響しますよね。
山とかもその時の印象とか出来事が、長く心に残ることがあります。
羽黒山はその歴史と美しい建築物の数々、
そして博物館収蔵の古仏たち。
なんて実は最初の下見はまったくの知識ゼロで行ったのですけれどもwww
随身門をくぐると、一度深く下に下っていく地形です。
祓川神社と岩戸分神社があり、
江戸時代に天宥別当が造った人口の滝で、
入山前の禊などここで行われたのでしょうか。
この時はほぼ水が流れていませんでした。
素晴らしい・・・・。
駒ヶ根にある光前寺の三重塔もすごく美しいのですが、
これほど大きく素晴らしい五重塔は初めて見ました。
現在の塔は600年ほど前に再建され、
創建はなんとあの平将門だというのです・・・・!!!
素晴らしい巨樹と、周りの自然の美しさに、
心が洗われます・・・。
山頂まで40分ぐらいはかかる2446段の石段なのですが、
これだけのものをこの深い山中に作るとは・・・。
簡素で美しい風景の中に、ちょっと普通では考えられない財力をここで感じていました。
(笑)
途中石段にヒョウタンの彫り物があるのを見つけました。
後から聞いた話では33もあるのだとか。
途中の二ノ坂に、景色の良い茶屋もありますのでひと休みしましょう。
この羽黒山でもっとも私が気に入った場所は、
南谷庭園別院跡。
時の松尾芭蕉も滞在したという別院があった場所で、
今は小さな東屋と池しか残っていないのですが、
とても素晴らしい気を感じるところでした。
参道からは少し離れてしまい、訪れる人もほとんどいなくて、
私にはとても惹かれる場所でした。
蚊がとても多いです。(笑)
山頂の羽黒山神社の正面には鏡池があり、
500枚以上もの鏡が見つかっていて、平安の昔かそれ以前から、
この池は神霊そのものとして信仰の対象になっていたそうです。
そして個人的に絶対に見たほうがいいと思うのは、山頂の歴史博物館。
ここにも聖徳太子や三面大黒天、
役行者の時代の流れで真っ黒になってしまった象眼の木像があるのですが、
鞍馬寺の木像と同じく、
「生きている・・・、こっちを見てる。」
としか思えない像が何体かあって今だに忘れられません。
そして翌日、月山から湯殿山へと朝いちばんで向かいました。
とても気持ちのいい風が吹いていきます。
大きくて、美しい。
見事です。
残念ながら毒草なので、葉っぱをかじったりしてはいけません。(経験者は語る)
弥陀ヶ原と呼ばれるここは、
死んだ後に来る場所のような風景に感じる方もいて、
月山で死んで湯殿山で生まれ変わるというこの山の信仰も
深くうなずけるものがあります。
この池の横に佛生池小屋があります。
初夏に日光白根山から東北の高山で見ることのできる、
大きくて非常に美しい貴重な花です。
本宮を越えると、3分ほどで頂上小屋があり、宿泊や食事ができます。
実はこの日、雪の状態が分からなかったので、
頂上小屋で宿泊する予約を入れていたのですが、
思わぬ展開になったのです。
登山開始の月山八合目へ向かう朝イチのバスの中で、
2人の若い外国人の方と出会いました。
彼らの服装と装備に不安を覚えて、
「月山から湯殿山まで縦走する予定なの?」
と話しかけてみたのです。
そうだと答えたので、湯殿山からの最終バスの時間がとても早い事、
今は残雪期で2人の装備だと危ないこと、そしてルートが分かりにくくなっていて、
予想よりたぶん時間がかかる事などを話しました。
特に男の子は普通のバッシュみたいな靴で、
雪の上を歩くにはかなりマズそう。
彼らはやはり何も知らなかったようで、
下には最低このくらいの時間についていないとマズいから、
無理だと思ったら引き返すように言いました。
2人の様子を見ながら月山山頂まで行くと、
男の子は女の子を置いて急いで先に行ってしまい、
女の子と小屋で休憩をとりながらいろいろ話をすると、2人は連れでも何でもなくて、
ただ単に同じ宿だった模様。
彼女にどこに泊まる予定なのか確認すると、
ネットで予約してホテルの名前も分からないという。
ビックリして予約したものを見せてもらいましたがハッキリしない。
「神社の近くのホテル」と言うのでたぶん湯殿山の参篭所ではないかと見当をつけて、
頂上小屋で宿泊予定だったのを事情を話して彼女と湯殿山まで下山することに。
快くキャンセルさせて下さって、ありがとうございました。
頂上小屋はとても居心地が良いところでした。
ちなみにここでのカレーとコーヒーを、彼女がご馳走してくれました。
ありがとね。
さて、頂上小屋を出発すると、だんだんと天候が変わってきました。
月山から先は所々ガスも出て完全な雪山となっていて、
縦走するつもりだったグループが次々に引き返して戻って来ます。
姥ヶ岳へ向かう斜面に入ると、様子が一変します。
実は月山は積雪量が多すぎて、日本一スキー場が開くのが遅い(4月〜)場所。
この日は7月4日だったのですが、結構な雪です。
この先に月山スキー場のペアリフト上駅があるのですが、
姥ヶ岳の大斜面にクレバスが隠れていることもあり、コース制限や複数人行動が求められます。
正直私もちょっと舐めてましたわ・・・。
ここから装束場と呼ばれる着替えのための小屋まで、
夏場は小川が流れたりする美しい草と岩の道なんですが、
岩場とハシゴが連続する場所がありますので注意です。
この時は湯殿山までかなりの積雪で、
崩壊や踏み抜きに注意が必要でした。
そして湯殿山手前の岩門のところが雪で結構ヤバい感じになっていて、
足元を崩して滑らせたら断崖まっさかさまなので、
先行して足場を確保してから彼女を渡らせたら、
『インディ・ジョーンズみたいww』って笑われました。
(ちなみに地図も持たずに先に突っ込んで行った男の子の足跡らしきものを、
注意しながら時々チェックしていたのですが、
滑落したような跡もなかったので、どうやら無事にバスの時間に間に合った模様です。)
なんとか無事に湯殿山に到着し、
他にはない御神体に参拝して登らせていただき、
そこからすぐの湯殿山参篭所の玄関で声をかけると、
確かに彼女の予約が入っているというのでひと安心。
自分も泊まれるかと聞くと、日本語がまるで通じないので助かりますと言ってくれて、
一緒の部屋に泊まることに。
夕食のときに、無事に彼女を連れてきてくれた御礼にと
ビールをご馳走になりました。(ありがとうございました〜〜)
この湯殿山参篭所はとても良くて、
湯殿山から溢れ出る湯を引き込み、丹生水上神社として神棚の祀られた神の湯があって、
入浴することが出来ました。
湯殿山で生まれ変わることの締めくくりに、
これ以上ふさわしいものがあるだろうかとじんわり思いました。
弘法大師空海が開いたと言われる湯殿山は、
日本の霊場の中でも非常に特殊だと思います。
湯殿山で体験したことは、「語るなかれ、聞くなかれ」
という戒めが古くからあるのですが、
慈覚大師円仁の開いた下北半島の恐山といい、
なぜ彼らがその場所を選んだのかは、実際に訪れてみるとわかるような気がします。
他にはない特別な場所、
そしてそこで修行することで、今まで過ごして来た時間とは
まったく別の思考と体験をする。
面白いことに、羽黒山の縁起は開祖は蜂子皇子と言って、
蘇我馬子に殺された崇峻天皇(聖徳太子の父の弟、泊瀬部はつせべ)
の皇子とされているのですが、
昔は出羽三山に湯殿山は入っておらず、空海が開祖というのも
大日坊にある記録からなのだそうです。
ちなみに多くの即身仏になられた上人のお名前に「海」がつくのも、
空海の一字を取っているのだと。
羽黒山と湯殿山のあまり表に出ない関係も、
訪れて初めてわかったことのひとつです。
百聞は一見に如かず。
さて一晩いろいろな話をして仲良くなったセシールですが、
翌日もバスが数本しかなく、
私は大日坊に寄るつもりでいたので誘ったのですが、
彼女は新幹線の予約を入れていると言う事でここでお別れ。
その後メールでやり取りをして、
ここでの事をブログとかに載せても構わない?と聞いたら、
快くOKをくれました。
この後行きたいと言っていた富士山にも無事登れたようです。
Dear ●●●●,
Thank you for the pictures! Yes I climbed Fuji last week and it was a very good experience, I am very happy I did it! I even saw the sunrise from the summit! It was amazing.
It was great meeting you, you saved my life! All the best and if I am ever back in Japan and I need adventure or just a nice walk, I will definitely contact you.
彼女にとっても月山と湯殿山でのファーストインパクトは、
なかなか印象に残るものだったのではないでしょうか。
その後スノーモンキーを見たり、スキーをしたいとメールをもらって、
私が志賀高原でしていたスキーの仕事と予定が合わずにそのままになってしまったけど、
今でも元気で楽しく冒険しているかなぁ
またどこかで会いたいね!
そしてこの後訪れたのが、昨日の記事の南岳寺なのでした〜