おきらくごくらく。

山と自然。日常のあれこれの雑記ブログ。

「エル・シオン」と「桜大の不思議の森」。

香月日輪さんの作品20冊目を読破。(当然ネタバレ有りでございます〜〜)

エル・シオン (徳間文庫)

 

初めて物語の舞台が日本以外のお話でした!

この方の作品の日本物がすごく好きで、

洋物だとどうなんだろうとちょっとだけ不安に思っていたんですがさにあらず!

 

 

主人公の18歳の少年バルキスの住むオルムランデ国は、

彼が生まれる前に強国ヴォワザン領主ドオブに占領され、

恐怖政治に支配されていましたが、

なんとその理由が、「かつて地上を恐怖に陥れた魔王の封印を解き、

その力を手に入れるため」でした。

そんなことはつゆ知らず、ヴォワザン権力者たちからたった一人で

ごっそりお宝をいただく「神聖鳥(シモルグ・アンカ)」と巷で呼ばれる盗賊

として活動していたバルキスが、ある日その魔王の封印を知らぬ間に

解いた・・・というより、

魔王が彼と出会って目覚めた、という方が正しいですね。

 

そしてここが香月作品の面白いところなんですが、

なんとこの石棺に500年も封印されていた魔王が、

見た目も中身も素直な5〜6歳の男の子だった!!!

というところからお話が始まっていきます〜〜〜!!!

 

コミックのような軽快なテンポが香月作品の特徴の一つだと思うのですが、

この魔王フップが魔法のアイテムを出す時が、

なんかこう・・あれだ、

まるでドラえもんみたいに

「空とぶ じゅうたんーーーーっ!!」

とかいちいち叫ぶんですがこれが可愛い(笑)

 

この方の作品はどれも「今風」なんですよね。

言葉遣いも笑いのツボも。

 

物語の後半で、高等魔道士のペルソナ僧という二人が出てくるのですが、

これがなんと関西弁!!!で、「ペルソナことば」と言われる独特の言葉

という設定になっていてウケました〜〜〜(笑)

 

 

で、今まで香月作品を読んだ中で必ずと言っていいほど

共通する特徴を持った人物が登場します。

 

それは・・・・

黒髪、ハンサム、長髪、強力な霊能力を持つ魔道士

「妖怪アパートの幽雅な人々」では「龍さん」

「地獄堂霊界通信」では「蒼龍」

そしてこの「エル・シオン」では仙人(アヴァロン)のシグマ

 

この人たちどこをどうみても特徴が同一人物と言っていい。

ひょっとして香月さんの憧れのタイプだったりして・・・?

なあ〜〜んて、思っちゃったりしました。笑

いやん

 

同じく大好きなダークファンタジー作家の恒川光太郎さんの作品は、

終わりがなんとも言えない無常感漂う切なさに満ちているのですが、

香月さんの方は、若々しい喜びと、生の感覚に満ちていて、

読後感が非常に明るく安心して楽しめる感じであります。

 

そしてお話の根底に流れるのは、

どれも香月さんの力強く繊細なメッセージです。

香月さんの口調や、主張の強さに衝撃を受ける方も多いようですが、

おばちゃん言ってることわかる!わかります〜〜〜ウンウン

 

香月さんのストーリーの中心にあるのはすごくシンプルなメッセージで、

お説教臭いとも言われているようですが

神や見えない力をアテにしてはいけない、

命は・・・巡るものであって欲しいという願望。

 

「私たちの存在には意味がある。なによりも確かなもの、

 それは自分である。

 自分や自分たちの力を鍛えて、強めていかなければならない。」

 

 

 破壊と創造の力を持ち、マスターと決めた人間の夢や思いを叶える

魔王フップの力を借りて、状況を一気に思い通りに変えようとするドオブレと、

それをすることに疑問を持つバルキス。

  

 

 

子供の姿をした魔王フップが自分のマスター、エルアルコン(支配者)バルキスに

語りかけるセリフがあります。

 

「終わりのないものなんてないんだよ、バルキス。

 海も、空も、大地も、いつかはなくなる

 神様だって、力をなくして消えるときが来るんだ。

 それは、1日で咲いて散ってしまう花とおなじ。

 1日か千年かのちがいはあっても、命の価値は変わらないんだ。

 死をなげいてはいけないよ。

 死は、生とおなじ輪の上をまわる兄弟(コンバーレ)だ。

 つぎの命への入り口なんだ。

 アーチェの魂は、死という入り口をくぐって、

 つぎの人生へうつっていったんだよ。」

 

命の輪はまわる。生から死へ、死から生へ。

未来へ、未来へと命をつむいでいく。

そして、悠久の時間のなかで、また会える。きっと。

いつか見た、あのなつかしい笑顔に。

 

自然と宇宙のことわりを知る神霊であるフップは、

同時にまだ幼いままの純真な魂を持ったままで、

少年アーチェと家族のように心を通わして初めて

「幸福感」という感情を知ります。

そして純真なゆえにまだまだあらゆる面で未完成なその巨大な魔力を見て、

決してヴォワザンのドオブレに「教育させてはならない」と冷や汗をかきながら

フップを守ろうと決意するバルキス。

 

 

このタイトルの「エル・シオン」とは、幻の都の意味。

バルキスの故郷、失われたオルムランデ。

そしてその故郷とすべてのものをドオブレから奪い返すために

バルキスとフップが作り上げた幻の都、エル・シオン。

すべてが終わったあと、その王国は忽然と消え、

フップもまた・・・・

 

 

とにかく登場人物がすべて魅力的なこのお話。

子供から大人まで楽しめる、香月作品のオススメです!!

(たぶん全作品がオススメ・・・) 

 

エル・シオン

1999年7月〜2000年7月までの三部作(ポプラ社)を、

初版2015年6月15日に徳間文庫よりまとめて出版。

 

 

 

 

桜大の不思議の森 (徳間書店)

 

そしてこれが19冊目に読んだ「桜大(おうた)の不思議な森」

都会の喧騒からほど遠い、黒沼村というところで生まれ育った13歳の

中学生桜大少年が主人公のお話で、

コミックスを読んでいるようなテンポは息をひそめ、

じっくりとなつかしい風景と大切な場所と、

そこで生きる人々を見ているような、

そんな気持ちにさせてくれる物語です。

 

香月さんの子供時代の風景や、かいま見る不思議や、

読み終わって、日本のどこにもかつてあった自然と生活の、

失われた桃源郷への憧れが、切なさとともに無性に掻き立てられてしまいました。

 

数々の理由のわからない不思議は、

たぶん香月さんの実体験が含まれているんだろうなあと思うのですが、

ここでも例の「窮地を助けてくれる長髪ハンサムの霊能力者」ソラヤが出てきて、

原体験の中でそういう事があったんじゃないかと想像(コラッ)

 

 

お話の中で、

年老いた?猟師が近づいてくる嫌な気配に、見なくてもあるイメージが

湧いてくる場面や、神に助けを求めてフッと体が軽くなり、

その時のことを

「全部勘違いだったかも知んねえ。

 だが、そんな風に考えたら、わしはこれから先、

 やっていけん気がするんじゃ」

 

という話とか、似た経験をしたことがある身には、

ブンブン音を立ててしまうぐらいうなづけます。

 

 

香月作品は、子供たちへの普遍的なメッセージを多く含み、

じっさいに学校や街で大人でも体験する理不尽な体験が

たくさん出てきます。

乱暴な言葉やどうやったら止められるのかわからないような暴力のシーンもあります。

でもそのひとつひとつに丁寧に向き合った物語展開で、

それが不思議な体験ともからまり合い、

人生について、生きて経験するさまざまなことについて、

深く考えさせてくれます。

 

不思議な体験を気持ち悪い!と否定されて傷つき、

村から出たくないと思っていた桜大に、

「不思議なことは、日本中にあるんやで。

 不思議なことに限らず、お前は、そういうことを勉強するべきや。」

 

と世界の広さを伝えようとするセンセイや、

 

転校してきたどうしようもないほど頑なで、

やりたい放題の暴力や暴言をふるって

周りを恐れさせる子供に起こった出来事と心の変化が、

命の根源と触れることと密接に関係しているお話など、

心の琴線にふれるストーリー展開と文章がすばらしいです。

 

あとがきによると、

この「神罰」のお話は、作者の地元で起こった実話なのだそうで

「心の底から、わかりやすい神罰を、もっと下そうよ、神様」

「政治家と、日本のライフラインを握っているトップあたりに、

 これが神の力だ!みたいな神罰がくだらないかな〜。」

というホンネも書かれていて、深〜〜く同意してしまいます。

 

自分の力以外をたのむ姿勢はよろしくないものだ、

というメッセージを全体に込めつつも、

自然の想像を絶する力と宇宙の摂理の中に、

あきらかにうまくいかない世界のさまざまな現実に、

神の真意のようなものを願わずにいられない、

作者の気持ちがよくわかります・・・・。

 

今年もっとも深くハマっている香月日輪さんの作品、

次はどんなお話に出会えるのか・・・・

とても楽しみです。

 

 

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